ゆりは、花びら6枚から成る自生植物ですが、商品になっているものは98%がオランダで開発された品種を育てたものです。
年間で試作込みで600品種、失敗作まで含めると何十万品種も作られていて、現存するゆりの品種は何百種類もあります。
一般的にゆりの香りは好まれませんが、一つだけ良い香りの品種があり、猿子園芸でも10年ほど育てています。色も一概に白と言えど色々な白があり、お花屋さんにすら伝わらない微妙な違いもゆりの面白さの一つです。
その他、花粉がつかない品種なども作っています。
まずはオランダでの作付けのため、2年後に作る品種を考えるところから始まります。
ゆりは生育までに3か月くらいかかり、つぼみが立派に育ったら一週間で一気に収穫していきます。適温は人がトレーナーを着ているくらいの温度で、急激に上げるのは良くないため温度管理も重要です。
咲く期間が短いためつぼみのままお客様に出荷しており、きちんと良いゆりを届けられるかいつも緊張しながら出荷します。
良いゆりが育ったかの目安は葉っぱの艶。艶良くできると花は必然的に良くなります。試行錯誤の末たどり着いた、微生物を生かした状態での有機質肥料を使った、ゆっくりじっくり育てる方法で、葉っぱの色が光沢が良いゆりをお届けしています。
日本が原産のヤマユリは実は美しい黄金比率で構成されています。
ユリの花粉は拡大してみると不思議な形をしていて、またおしべの表面はきれいな六角形になっています。
ユリはおしべの水分蒸発させて粘膜を出しますが、水分の蒸発する速度と粘膜が固まっていく速度が虫が来た瞬間に花粉がつくような絶妙なバランスを保っています。これにも六角形の通気孔であることがとても大事で、日本の気候にあっています。
ゆりは数学的に見てもフィボナッチ数列にピタッとはまっており、美しい黄金比率をもった植物なのです。
猿子園芸でどのようにゆりを育てているかをご紹介。ぜひご自宅で育てる際の参考にしてください。
猿子園芸はオランダからゆりの球根を仕入れていますが、実はゆりは98%がオランダの商品です。
オランダでは苗そのものというよりも苗の“品種”を作っており、いわば知的産業として栄えています。ゆりの品種は、年間で試作込みで600品種。失敗作まで含めると何十万品種も作られています。現在猿子園芸で生産しているゆりだけでも42品種ありますが、生産者が迷うくらい見分けるのが難しい品種も多いです。
まずは、オランダで作付けのため、2年後に作る品種を考えるところから始まります。
毎年花にもトレンドがあるため、2年先を見据えるのはとても大変です。仕入れるゆりを選ぶ際は、生産者のネットワークで話を聞いたり、日本でゆりを生産している農家に視察に行ったりしています。
しかし、土地が違うので、同じ品種を選んでも気候や土質によって、出来上がりが変わってきます。そのため、自分の風土に合ったゆりを選ぶのはとても大変です。
猿子園芸では、農薬をほとんど使っていない有機栽培でゆりを生産しているため、全般的に薬かけをしなくても良い品種を選んでいます。
有機質肥料にすることで病気にかかりにくくなります。学生時代に有機農業に力を入れていたため、私の得意分野です。
0℃以下の時、球根は眠っている状態です。0℃より高くなると芽が伸びてくるため、オランダから球根が届いたら直ぐに-1℃~-1.5℃程の冷凍庫に保管します。
一般に球根販売は球根を乾燥させたものを販売しているので、その状態では芽が伸びることはありませんが、そのまま長く保管すれば球根の品質が落ちていってしまいます。
球根は大量に届くため、素早くすべての球根を冷凍庫に適切に保管し、また種類をきちんと整理して入れていきます。
0℃以上+水分で初めて芽が成長しますが、家庭でゆりの球根を育てる場合は冷凍保存等はせず、持ち帰ったらできるだけ早く土に埋めてあげてください。
大体ゆりは生育までに3か月くらいかります。そのため、3か月後に咲くことを想定して解凍する時期を考えますが、その時期の気候や温度によって多少前後します。
また、再冷凍はできないため、球根を解凍するタイミングはとても重要です。室温20℃くらいで温度管理し、24時間かけて解凍し、その後1℃~2℃の冷蔵庫に入れて芽伸ばしをします
外の気温が20℃程の際は外で解凍することもありますが、解凍温度が高すぎると腐ってしまうので細心の注意を払います。
解凍したゆりの球根を運んできて土と分離し、分離した土を下にひいて上からゆりの球根を綺麗に並べます。
並べた球根の上に土を重ね、水をかけます。解凍+水分を与えて初めて芽が伸びていきます。
水で土がひたひたになるくらい、たっぷりと水を与えます。ビニールの下には細かい穴が開いているので、水を与えすぎてしまう心配はありません。
芽が出て、ある程度成長するまで2週間ほど冷蔵庫で保管します。通常12~13℃、春先は10~15℃くらいを保ちます。
しかし、何℃がベストだと言う答えをだすことは難しく、毎年温度を見ながら調整を図っています。
1℃、2℃の差で葉が伸びるスピードが変わってくるので、この辺りの温度管理はとても大事です
二週間ほどで芽が土から12cm、13cmくらい顔を出します。そこでいよいよ植え付けに入ります。
均等に植え付けるため、トラクターで土を平らにならし、遮光をして育てるため、ハウスに遮光幕をかぶせていきます。均等に植えられるように、植える場所を糸で区切ります。
猿子園芸では全部で60棟くらいのハウスや路地でゆりを生産しており、県内ではトップクラスの規模を誇ります。
深さ10cmくらいを目安に、ゆりを均等に植え付けていきます。
深すぎると下の根が酸欠になりますが、球根ぎりぎりで埋めてしまうと球根が土から見えてきてしまう場合があります。というのも、球根の上2cmくらいはこの先芽から根になる可能性がある範囲のため、植える深さはとても重要になります。
球根で8cmほどの大きさがあるため、だいたいの目安が10cmです。
球根部分が地面から2~3cm深く土に埋まるくらいがベストです!
猿子園芸では、井戸や川の水を利用して、自動で水やりをしています。
岩手県の気候では、水やりをしなくてもゆりは育ちますが、水やりをすることで茎の長さが揃い、葉の色が良くなります。
一週間は毎日水かけをしますが、ハウスは水がたまるので10分程度、路地の場合は1回30分~長くて1時間ほど行います。
すぐにたっぷりの水を与えます
水かけをした翌日に、上から「わら」をかけます。ゆりは乾燥に弱いため、保湿・遮熱・雑草を抑える効果のある「わら」がその特性を補ってくれます。
葉っぱが良くできると花は必然的に良くなるため、花の生産に土作りはとても重要です。
以前は、土に蒸気を当てて微生物を殺し、微生物が腐ると肥料分が出るので、ゆりの生育に良いと言われていました。
しかし、微生物を生かした状態で有機質肥料を入れた方が、肥料として急に効かないため、ゆっくりじっくり育ち、それにより葉っぱの色が光沢が出やすく生命力も強くなります。そのため、現在はこちらの方法でゆりを育てています。
その差は一目瞭然。1日で葉が青々と伸びていきます。
3週間ほど経つと、70-80cmまで成長します。※品種により異なります。
2カ月ほど経つと、120-130cmまで成長します。※品種により異なります。
3カ月ほどでつぼみが立派に成長します。収穫は、まだ青く硬いつぼみの状態で行うのがベストです。
猿子園芸が花屋さんへ出荷する時は、見た目の綺麗さより長さのあるものが価値が上がります。また、つぼみの状態で出荷する必要があります。
時期を逃すと一瞬で開いてしまうため、つぼみの開かないうちに一気に収穫しなくてはなりません。
色のあるゆりについては、アントニアシンという物質によってピンクや赤色になりますが、切るのが早すぎると色味が出なかったり、薄くなったりします。そのため、収穫のタイミングが重要になります。
「冬はどうしているんですか?」
とお客様に聞かれることがありますが、猿子園芸では一年を通してゆりを栽培しています。
雫石は特に冬場の寒さが厳しく、外は大雪でハウスが埋もれかけることもありますが、そんな極寒の冬でもハウスをゆりの育成に最適な温度に保ち、一年中高品質なゆりを栽培しています。
収穫したゆりを一つずつ丁寧に梱包して箱詰めし、花屋さんやお客様の元へ届けます。
ゆりBOXご購入のお客様には、手元に届いて2日くらいで咲き始め、1週間くらいで満開になるようにお届けします。
ゆりを花市場や花屋さんに出すときは、到着してから1週間くらいで咲き始めるように出荷しています。
猿子園芸のゆりBOXはこちらでご注文いただけます。
つぼみが白くなると、2・3日くらいでつぼみが開きます。
ゆりは咲く期間が短いため、その美しさを長く楽しんでいただけるよう、咲く前にお客様の元に届けています。そのため、どのように咲いているのか・どのようにお手入れしたらよいかをお客様からご連絡・お尋ねいただくことも一つの楽しみです。
猿子園芸ではたっぷりの愛情と誇りを持って、ゆりを育てています。別の生産者の同じ品種のゆりが並んでいたとしても、自分で作ったものは分かってしまうほど。育てるのが難しい品種によっては、生産者の能力が顕著に表れるのもゆりの面白さの一つです。猿子園芸のゆりをぜひお楽しみください。
ゆりは、咲いた瞬間の花びらの質感が品種によって全く違います。光沢があるシルクのようなもの、木綿のようなもの、光を反射するものしないもの… 遠くからは、光沢があるシルク系や光を反射するユリの方が綺麗に見えるため、広い場所におすすめです。
とくに日本の場合、飾る場所が狭かったり近くで見る場合が多いので、マットな質感のゆりを選ぶと柔らかくなります。ゆり単体の色合いが強すぎる場合は、グリーンを中に入れるなどの組み合わせがおすすめです。
また、白いゆりでも品種によって個性があるので、詳しくはぜひお問合せください!
ゆりの花粉は、油のような物質で構成されていることから、ネチネチとした粘着質タイプです。そのため、洋服やテーブルでも、一度付いてしまうとなかなか落ちません。
色の薄いお洋服にゆりを擦ってしまい、苦労したことのある方もいらっしゃるかと思います。
ゆりを自宅に飾る場合、つぼみが開いたら花粉を直ぐに取ることをおすすめします。ゆりの咲き方や、きれいに咲く期間には影響しませんので、ご安心ください。
先に枯れてしまった花は、後から咲く花の邪魔にならないように切ってください。切る位置は軸の付け根ギリギリの位置が好ましいです。
切り花を保存するための方法として、「ドライフラワー」がありますが、ゆりはドライフラワーに向かない花です。ゆりの花は水分が多く、乾燥すると形が残りません。
同じ理由からゆりは「プリザーブドフラワー」にも向きませんが、猿子園芸では何とかゆりの美しさを長く楽しんでいただくために、世界初のゆりのプリザーブドフラワーの開発を進めています。